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物理現象や複雑情報の可視化研究を行っています!!
Meet Prof. Koji Okamoto
過酷事故時のスプレー冷却効果改善に向けた液滴挙動の基礎研究
液滴が固体表面に衝突したときの挙動は、原子力分野に限らず広い領域で大きな注目を集めています。本研究室では、液滴の挙動に関する基礎的な研究に精力的に取り組んでいます。ここでは、ドライガラス基板へ水液滴が衝突する時の液滴内の速度場をPIV(Particle Image Velocimetry)によって詳細に可視化した研究を紹介しています。
壁面衝突時の液滴内全領域における速度場可視化
液滴内部における温度場と速度場の同時測定
流動沸騰における金属ハニカム多孔質体を用いた限界熱流束の改善
限界熱流束を向上させることは、工学的に非常に重要です。過去には、ナノ流体や表面改質などといった様々な手法が提案されてきました。これらの研究の多くは、プール沸騰と上向き伝熱面について着目したものでした。本研究室では、下向き伝熱面を用いた飽和流動沸騰条件下の限界熱流束改善を実験によって研究しています。我々の研究により、多孔質体は限界熱流束を向上させ、表面の過熱を減少させる効果があることが明らかになりました。現在、本現象のメカニズム解明に向けてさらなる研究を進めています。
実験装置の概略図
金属ハニカム多孔質体(試験体)
異なる実験条件における沸騰現象可視化結果
下向き伝熱面プール沸騰における放射線誘起表面活性(RISA)が限界熱流束に与える影響
Ex-vessel cooling(炉外冷却)は、原子炉の安全上非常に重要なコンセプトです。これまでの研究では、RISAによる沸騰熱伝達の改善についてのものは限られていました。本研究室では、γ線と電子線を用いて限界熱流束の向上を行いました。まず、液滴実験によって放射線照射後の表面の親水性を調査し、接触角が大きく減少することが発見されました。さらに、プレートとハニカム多孔質体のそれぞれについて、プール沸騰実験を行いました。その結果、プレートでは限界熱流束が50~60%向上したのに対し、ハニカム多孔質体ではその影響が確認されませんでした。この世界で初めての実験的研究を鋭意進めています。
実験装置の概略図
RISAによる親水性変化の可視化実験結果
粒子法を用いた数値計算による溶融炉心とコンクリートの相互作用(MCCI)に関する研究
過酷事故時には、溶融炉心とキャビティ床コンクリートの接触によって、コンクリートが侵食され、ベースマット溶融貫通に至る可能性があります。このような溶融炉心とコンクリートの接触及びそれに伴って引き起こされる現象のことを、溶融炉心とコンクリートの相互作用(MCCI)と呼びます(引用:http://www.hepco.co.jp/energy/atomic/info/pdf/examination_meeting_102_10.pdf)。過去に行われた実規模クラスの実験として、CCIシリーズがよく知られています。本研究室では、最先端の数値計算手法である粒子法を用いて、CCI実験の数値解析を行っています。
数値計算の計算体系
数値計算結果と実験結果の比較
ヒートパイプを用いた燃料デブリ除熱に関する研究
BWR型原子炉において制御棒ガイドチューブが下部プレナムの溶融物ジェットブレークアップ挙動へ与える影響
沸騰水型原子炉(BWR)の下部プレナムにおける炉心溶融物のジェットブレークアップ挙動を理解することは、過酷事故の対策を考える上で非常に重要です。過去になされてきた多くの関連研究は、加圧水型原子炉(PWR)に関する研究でした。しかし、BWRの内部構造はPWRと大きく異なります。特に、BWRでは制御棒を炉心の下から挿入する仕組みになっており、そのための制御棒ガイドチューブ(CRGTs)が下部プレナムに実装されています。本研究室では、このCRGTsがどのような影響をジェットブレークアップ挙動に与えるのかといったことに着目し、実験と数値計算による研究を行っています。
ジェットブレークアップ挙動の可視化実験結果
圧力抑制室における温度成層化現象の発生と消滅のメカニズム解明
BWRのトーラス型サプレッションプールにおける直接接触凝縮と温度成層化
蒸気の凝縮によるサプレッションプール内の温度成層化を1/22スケールの模型を使って実験的に研究しています。実験では,フクシマ事故時の非常用炉心冷却装置(RCIC)を模擬しています。温度成層化の発生と消失のメカニズムを理解するために,凝縮に影響を与えるいくつかの物理量 (蒸気流量,サプレッションプール内圧力,サブクーリング)について実験を行いました。
1/22スケールの原子炉サプレッションプール実験装置
蒸気の凝縮現象の可視化実験
シビアアクシデント条件下の原子力プラント材料の挙動
原子力プラントのシビアアクシデント時のような,高温・高圧における材料挙動を研究しています。具体的には,実験的に細長い金属板に加わる座屈荷重を様々な条件で測定しました。座屈試験は,室温から1200℃までの幅広い温度帯域において行い,測定した座屈荷重を数値計算と比較しました。
さらに,高温条件下で鉄鋼材料(SUS304)の座屈に対するクリープの影響を調査しました。柱の横方向のたわみを測定し,時間-たわみ曲線を作成しました。測定したクリープ座屈時間から,ひずみとクリープ座屈時間の関係が求められます。本研究の結果は,高温条件下の材料挙動メカニズム解明につながることが期待されます。
RELAPを用いた福島第一のシビアアクシデント解析
福島第1原発 2号機は,東日本大震災の津波により全電源喪失状態になり,シビアアクシデントに陥りました。AC/DC電源喪失により各種計測が困難となり,事故時の原子炉隔離時冷却系(RCIC)タービン性能に不確かさがありました。RCICタービンは約60時間動作していたにも関わらず,詳細な情報が全くなかったのです。また,得られたデータによると,スチームコンバーター(SC)が冠水した可能性があります。これらの未解明部分を明らかにするため,シミュレーションコードRELAPを用いて,RCIC turbine-SC-RCIC driven pump systemをシミュレーションします。